良い造語って見ただけで何を意味するのかすぐにわかるから凄い。
ミートプロキシ (Meat Proxy)
日に日にAIが加速的に進化していき、情報に出くわす度にAI生成かどうかを判断するレイヤーが脳内に新しく追加されるくらいAIが身近になってしまったこのご時世。 人とやり取りしている中で以下のような場面に出くわしたことはありますか。
Aさん: XYZのところで問題起きているけど、Bさんなにか知らない?
Bさん: チャッピーに聞いたらYが原因だそうです!
こういうふうに質問をAIに聞いてその答えを返信としてそのまま返す人をミートプロキシと呼びます。1
情報の流れに着目すると、代理 (Proxy)で人 (Meat)が間に立ち、そこを経由してAIとやり取りしているからこういう名前がついています。代理人を「肉」と呼ぶことで介している情報に一切の付加価値を与えない様を簡潔に表している、実にうまくできた言葉だと思います。
人によってこのやり取りに対して思うことは色々あると思うのですが、よくある感想の一つが「自分でAIに聞けばいいからその返答意味なくない?」といったものです。
問題点
ただ考えてみれば、これに対して不快感を持つのもまた不思議な話だと思うんですよね。
別の例えで、人と話している時に「〇〇ってなに」とスマホを手に持っていながら聞いたこと/聞かれたことはありませんか。
「自分で調べればいいのに」や「ggr(ks)」2とムカつくことさえもあります。
要は物事を調べることって面倒な作業なんですよ。
最初のやり取りで、事実として、Bさんは
- 嘘をついていない
- Aさんに聞かれたことに対して、Aさんのために時間を割いてAIを使って調べた
- (場合によっては)AIの利用コストを負担している
以上のことから、Bさんは身銭を切ってAさんの疑問に答えたと考えることができます。これだけ見ればありがたい話ですよね。 それなのに、ミートプロキシされた時のモヤッとした感情は一体なぜ起こるのでしょうか。
不快感はどこから来るのか
なぜ我々はミートプロキシに対して不快感を持ってしまうのか。 情報を求める立場から今一度考えてみたいと思います。
期待していた情報と違うものが返ってきた
AさんがBさんに聞いたとき、AさんはBさんの意見が知りたかったのかもしれません。それが、チャッピーからの返答を渡されると、期待していたBさんの意見では無くなってしまうわけです。Aさんからすれば、知りたかったことと違うことが返ってきているわけなので、嬉しくはありません。更にAさんは聞き直さなければいけないので、やり取りも増えてしまいます。
労力のアウトソーシング
人は他人が自分のために頑張ったり、時間を使ってくれると基本的には嬉しいものです。その労力がAIによって賄われてしまうとどうでしょうか。自分に対して頑張ってくれないようにも見えます。
この考え方は既製品にはない手作りによる「温かみ」と似たようなものだと思っています。人によっては情報の質よりも、自分の返答のためにその人がそれなりの労力を払ったかどうかを重視することもあります。
AIの拡張性による不透明さ
AIというツールは自由度があまりにも高く、使い方に際限がありません。
Googleを使って調べるという行為は調べ方に個人差はあれど、検索エンジンを使うという枠組みから外れることはありません。
その一方でAIは、やれ「ハーネス」だの「ループ」だの新しい方法が絶え間なく湧いています。AIを使うという枠組みがあるものの、その枠はいくらでも広げられるようになっています。
AさんとBさんがどのようにAIを使うのか、大きい違いがあるのかもしれません。AさんにとってAIを使うといった行為がただ「XYZってなに?」というプロンプトを投げることに対して、BさんにとってAIを使うというのがハーネス済みのエージェントから返答を得るということだったらどうでしょうか。
使い方が広すぎるがゆえに、「AIを使う」という認識に大きな齟齬が生まれています。Bさんにとっては「AIを使う」ことが大変な作業でもAさんは知ったこっちゃありません。
どうすればいいのか
人によってミートプロキシに対する不快感は様々です。 ここではどうすればミートプロキシを回避できるのかについて考えてみようと思います。
ミートプロキシをしないように
AIが賢くなっていっていくことで、依存度は増す一方です。この先、最初はAIに投げるのが常識となることもあるでしょう。そのため、結局はどのように返信するのかが肝だと思っています。
人は上から文章を読みます。その人が欲しいと思う情報を一番上に書いておき、補強する形でAIの情報を付け加えてみましょう。
AさんがBさんの意見を欲しているならば、
Bさん: XYZは以前もAAのような問題が起きたので、BBが原因だと考えています!
チャッピーにも参考までに聞いてみたら、同じようにBBがおかしいとのことです!
という返信が好ましいと思います。
逆にAさんがAI大好き人間ならば、AIの考えを先に書いてから、自分はこう思いますといった具合に補強すれば良いでしょう。また、相手がどっちか一つのアイデアしか好まない場合はそれだけ送るのも良いと思います。相手が求めている情報に対して的確に返してあげることが重要だと思います。
ミートプロキシをされないように
AIに聞けばいいと思われないような質問をすれば、ある程度は回避できると思います。そのためにも名指しで具体的な質問をしましょう。
Aさん:
Bさんなにか知らない?→ Bさんはどこが怪しいと思いますか?
質問が具体的であればあるほど、返答する相手は何が求められているのかわかりやすくなります。
抽象的な質問の場合、相手は何を返せば良いのかわからないため、塩梅を狙ってAIを使いミートプロキシになってしまいます。
ミートプロキシに出会った場合
やり取りを見直して、なぜ起こってしまったのかを考えるところから始めてみましょう。 実力不足だったり、普段からAIを使い倒している人だったり、やり取りが原因でない可能性もあります。 究極、ミートプロキシが起こっていることで、何が問題かを見極め、相手に共有することも手段の一つだと思います。
ミートプロキシによって発生する問題で一番良くないのは、やり取りの中で求めている情報を得るためのコミュニケーションコスト3が高くなってしまうことだと思っているので、ミートプロキシが起こっていても、欲しい情報が負担無く得られているのであれば、それはそれで良いとも思います。
まとめ
コミュニケーションって難しいですよね。ただ、ほとんどの問題はチャットを受け取った相手がどういう情報を得られるのかを想像すれば回避できる問題が多いとは思っています。
オモイヤリ、ダイジ。
それではまた。
Gruhn, Niklas. Don’t be a meat proxy, Sept 5, 2026. ↩︎
最近では「フィンガープリン(セ)ス」という言葉もあるらしい。 ↩︎
情報の伝達にかかる(時間や労力などの)コスト。高ければ高いほどやり取りに負担がかかる。 ↩︎